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短報  三重の生きものだより 第20号 2004.1.10発行

川越町高松海岸におけるアカウミガメの産卵

谷口真理・中村みつ子**・岡由佳理**・若林郁夫**・水谷いずみ***

 2003年10月24日、三重県三重郡川越町の高松海岸においてアカウミガメCaretta caretta (Linnaeus) の卵が発見された。犬の散歩中に浜辺を通りがかった近所の男性らが野犬に掘り出されたらしい3〜4個の卵を発見したものである。同日、著者らは産卵巣の内容物について調査を行うことができたので報告する。
 産卵巣は波打ち際から約20メートルのところにあり、掘り出されていたものを含め115個の卵が見つかった(図1)。それらの状況は、12個が孵化殻であったものの103個は未孵化卵で、孵化率は10.4%と非常に低かった。また、孵化したものの地上へ脱出できずに地中に残された未脱出の1個体も死亡した状態で発見された。未孵化卵103個の状況としては、79個が胚の形成が認められない未発生の卵と判断され、残りの24個は腐敗が進んでおり内部の状態を観察することができなかった。孵化日に関しては、10月3日の午前6時30分頃に散歩途中の男性が波打ち際3mほどのところで子ガメが海へ向かって歩いているのを目撃していることから、10月3日前後とみられる。この男性は長年、毎朝海岸の散歩をしているがこのような場面を目撃したのは初めてとのことであった。また、産卵の時期は、アカウミガメの産卵から孵化までの期間が約60日であることと、今シーズンの三重県北部での孵化が冷夏のためか全体的に遅い傾向にあったことから推測し、7月中旬から8月初旬頃とみられる。
 若林(1998)によると、最近の三重県におけるアカウミガメの産卵場の北限は、三重郡楠町の吉崎海岸であることが報告されている。今回産卵のあった高松海岸はそれよりも北側に位置しており、三重県における最北端の産卵場が新たに確認されたことになる。しかし、高松海岸はコンビナートに囲まれており、すぐ近くに道路建設の話もあり、産卵にとっては決して良好な環境とは言えない。今後も調査と保護活動を進めていきたいと考えている。
図1.産卵巣から見つかった未孵化卵と孵化殻
図1.産卵巣から見つかった未孵化卵と孵化殻


引用文献
若林郁夫.1998.三重県下での最近10年間の産卵状況.In紀伊半島のウミガメ〜十年のあゆみ〜:37-43,紀伊半島ウミガメ情報交換会,和歌山.



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