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短報  三重の生きものだより 第21号 2004.4.10発行

釣り針を飲み込んだイソヒヨドリ

岡由佳理・中村みつ子


 イソヒヨドリMonticola solitarius (Linnaeus) は主に海岸の岩場に住み(叶内ほか,1998)、オスの成体は胸が赤褐色で、頭から背中が青色の美しい鳥である。
 2004年1月5日、イソヒヨドリの死亡個体が、志摩半島野生動物研究会に持ち込まれた。この個体が発見された場所は鳥羽水族館の駐車場内で、口からは約1mの釣り糸が出ていた(図1)。駐車場の関係者によると、口から出た釣り糸が柱のボルトに絡まっており、半月程前から同じ場所にあったとのことである。しかし、気温が低かったためか腐敗が進んでいる様子はなかった。今回、この個体の測定および解剖を行ったので報告する。
 死亡個体は全長214mm、翼開長356mmのオスの亜成体であった。体には特に外傷が見られなかったことから、釣り糸が柱のボルトに絡まり、身動きが取れなくなったことが死亡原因と考えられる。解剖したところ、胃内には約3cmの釣り針(図2)が刺さっていた。イソヒヨドリは昆虫類、甲殻類などを餌とすることが知られており(叶内ほか,1998)、釣り針についた餌を誤って食べたものと推測される。
 著者らはこれまでにも、釣り糸が体に巻きついたアカウミガメや、口に釣り針が刺さったウミネコを見たことがある。釣り人によって無意識に捨てられた糸や針が、野生動物にとっては生死に関わる大きな問題となっており、さらなる釣り人のマナーの向上が求められる。
図1.口から出ている釣り糸
図1.口から出ている釣り糸

図2.胃内に刺さっていた釣り針
図2.胃内に刺さっていた釣り針

引用文献
叶内拓也・阿部直哉・上田秀雄.1998.山渓ハンディ図鑑7 日本の野鳥.623pp.山と渓谷社,東京.



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